生きた道徳

 中教審が小中学校で道徳を教科に引き上げるよう文部科学省に答申しました。これに対して国の価値観の押しつけだという批判や価値観の規定は難しいとの声もあるようです。どうも日本には道徳に対する拒否反応があるようで残念です。道徳と戦争教育とは違うものなのですが、いまだに戦時中の影響を引きずっているような印象があります。道徳を失いつつある日本には道徳教育が欠かせない大きな課題となっています。


 道徳とは人としてあたりまえのことを教えるものです。人に会ったら挨拶しましょう、自分が悪いと思ったら謝りましょう、嘘をつくのはいけません、家族を大切にしましょうといった基本なのです。私達は小学校の頃に習った、こういった基本的なことを身につけていれば、それだけで充分に生きていくことができるのです。知識や技能よりも、道徳こそが生きる基本になるのです。 


 まわりの迷惑を考えられない人間が一定数を超えると秩序が保てなくなります。近年はモンスターと呼ばれる人々が台頭してきましたが、まさに道徳の荒廃を象徴しています。様々な社会問題の根底には道徳の欠如があるのです。格差社会といわれますが、子供達にとっては道徳の不平等があると思っています。家庭が厳しく子供をしつけていれば学校の道徳は必要ないかもしれません。ですが、家庭が道徳教育を放棄しているならば、学校で教えない限り、子供達は道徳を学ぶことができない時代なのです。道徳を知らない子供は社会で生きていくことが難しくなってしまうのです。


 道徳の授業については教科書をやめるべきだと思っています。安易に教科書に頼り共通の授業をしようとすることに問題があるのです。道徳とは体験で学ぶものです。たとえばゴミ拾いをして、ゴミを捨てる人や拾う人の気持ちを考えること。最近あった学校の問題を考えること。地域の行事に参加したり、まわりの大人から話を聞くことも道徳の授業になるのです。自分達で考える、体験のなかで学ぶことが必要なのです。道徳は暗記できるものではありませんし、テストで点数をつけられるものでもありません。生きた道徳をいかに伝えるか、大きな転機だと思います。


応援クイックお願いします
にほんブログ村 哲学・思想ブログ 仏教へ
にほんブログ村